「その時間がどうだったか」
散歩とライカ
「ライカと散歩」なのか。
それとも、
「散歩とライカ」なのか。
どっちでもいいじゃん。
……と思ったんだけど、よく考えたら、これが結構違う。
「ライカと散歩」なら、主役はライカ。
「今日はライカを持って、どこへ行こう?」という感じ。
一方で「散歩とライカ」になると、主役は散歩。
街を歩いて、人に出会って、風景を眺めて、その横にたまたまライカがいる。
ただ語順を入れ替えただけなのに、ずいぶん印象が変わる。
日本語って、ほんとに難しい。
で、ここからが本題。
そもそも、ライカで散歩写真を撮って……
「だから何?」
と、たまに思う。
だって、自分で撮った写真を客観的に見ても、別に写真が上手くなったとは思えない。
むしろ、
「俺、下手になってないか?」
と思うことすらある(笑)。
「ライカ信者」の皆さんには申し訳ないけれど、ズミクロンで撮った写真と、ニコンのレンズで撮った写真。
撮影機材を伏せて見せられたら、僕にはその違いを言い当てる自信がない。
なんなら世の中の「カメラ機材評論家」の皆さんを集めて抜き打ちテストをしても、全員が正解するとは思えない。
じゃあ、なんで俺はこんなにクセの強い、扱いにくいカメラを使ってるんだ?
そこを考えていたら、あることに気がついた。
ライカで撮った写真は、なぜか記憶に残ってる。
枚数で言えば、ライカ以外のカメラで撮った写真のほうが圧倒的に多い
はずなのに、写真を見返したときに、
「このとき、こんな場所にいたな」
だけじゃなく、
「このとき、こういう話をしてたな」
「この人、こんな顔して笑ってたな」
「この日の空気、こんな感じだったな」
と、その場にいたときの時間まで蘇ってくるから不思議だ。
写真の「画質」が特別だからなのか?
画質は大して多くはないから違う。
ライカで撮っているときは、シャッターを切るまでの時間が長くて
露出を合わせて、フォーカスを合わせる。
レンジファインダーを覗きながら、被写体を見る。
そして、シャッターを切る。
その間ずっと、被写体と向き合う。
最新のカメラなら、カメラが大体やってくれる。
それはそれで素晴らしい。
でもライカは、ちょっとだけ面倒くさい。
その「面倒くささ」が、逆に被写体を見る時間を作ってくれているのかもしれない。
だからなのか、ライカで撮った人の表情には、どこか力が抜けている。
作った笑顔じゃない。
ちょっとした瞬間の、その人らしい顔。
もちろん、これは全部僕の「気がする」なんだけど(笑)。
でも、その「気がする」が、案外大事なのかもしれない。
20年以上、食わず嫌いだった。
「ライカなんて必要ないでしょ」
それなのに、ある日なんとなく買ってみた。
そして今、
「買ってよかったな」
と、なんとなく思っている。
この「なんとなく」が、ライカには似合っている気がする。
本業では、そうはいかない。
クライアントから仕事をいただいている以上、機材は常に最新スペックを求められる。
でも、このライカは違う。
もう、これ以上のスペックはいらない。
必要十分な画素数。
頑丈なボディ。
使い込むほどに削れていく真鍮。
ちょっとクセのある操作感。
シャッター音。
コンパクトで、ずっと持って歩ける重さ。
全部が、ちょうどいい。
最新スペックを追いかけなくていいカメラ。
それが今の僕には、ものすごくフィットした。
そして何より、
このカメラが、写真をもう一度楽しいものにしてくれた。
これって、結構すごいことだと思う。
写真が上手くなったかどうか?
たぶん、腕は後からついてくる。
……たぶん。
そう信じて(笑)、今日もライカを持って散歩に出る。
写真を撮るために散歩するのか。
散歩するためにライカを持つのか。
もう、どっちでもいい。
自身にとって大切なのは、
あとから写真を見返したときに、「この写真、いいな」だけじゃなく、「この時間、よかったな」と思えることだとおもった。
僕にとってライカは、写真を残す道具というより、
「その時間」を残すことができる道具になったのかもしれない。
だから、これからライカを買おうか迷っている人には、一度触ってみてほしい。
もしかしたら、
「なんだこれ。使いにくいな」
と思うかもしれない。
僕も最初はそうだった。
でも、もし気に入ったら、その瞬間から少しだけ写真との付き合い方が変わるかもしれない。
もし気に入らなくても大丈夫。
ライカは比較的値落ちしにくいので、売ればいい(笑)。
ただし、壊さないこと。
そして、高額なカメラを買うときは、個人売買はくれぐれも慎重に。
僕自身、フリマ系サイトでは何度か痛い目に遭っている。
何十万円も払ったレンズが届いて、
「……カビだらけじゃん」
なんてことになったら、写真どころではない。
お金の問題だけじゃない。
楽しみにしていた時間まで、一気に嫌な思い出になってしまう。
だから高額なカメラやレンズを買うときは、保証があって、信頼できるところから買うようにしている。
理想は、
「手に取って、見てから買う。」
中古カメラの聖地、中野のフジヤカメラ。
実際に触って、状態を確認して買えるなら、これは強い。
ただし、欲しいものがいつでも店頭にあるとは限らない。
何度も中野まで通う時間と体力。
……今の僕には、ちょっと惜しい(笑)。
そこで最近ありがたいのが、ネットで購入できるカメラのキタムラ。
商品の状態についても比較的細かく確認できるし、在庫店舗に問い合わせれば回答も早い。
梱包もしっかりしていて、保証もある。
高額な機材だからこそ、
「最安値で買う」より、
「安心して買う」
ことも大事だと思う。
さて。
今回の台風も雨の合間を縫ってちょっと散歩してこよう。ライカを持って。
何か面白いものが撮れるかもしれないし
何も撮れないかもしれない。
それでいい。
きっと先になるだろう。
「この日、なんか良かったな」
そう、思える日が来たら
最幸だ。


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